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ロビーは通常、ホテルという内なる空間への玄関口である。たとえオープンエアであろうと、どれほど広大な面積を持とうと、ゲストにとっては単なる道標であり、待合室にしかすぎない。しかし時に、この玄関口がとてつもない異空間へのゲートとなるホテルが存在する。
フォーシーズンズリゾート。チェンマイのお世辞にも快適とはいえない舗装道路を北へ約30分。木々の間に小さなギャラリーがぽつりぽつりと建つのどかな場所に、そのゲートがある。ここのロビーは意外とこぢんまりとしている。北タイの素朴な楽器や手作りの民芸品が控えめに飾られ、ゆったりとしたソファと小さなレセプションブース。のどかだけれど、目を見張るようなしつらえではない。そして客室へ向かうためロビーを出る。その瞬間、ゲストは全く異なる時間の流れる別の空間に入り込んでしまうのである。 |
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獅子と龍をかけ合わせたような、日本で言えば狛犬のごとき石像が置かれている高台から望む、その風景! ここは本当にホテルなのか? 小さく区切られたライステラスで農民が働いている・・・。ひさしが広く、後ろに布が垂れ下がった本格的な農作業用の帽子と長靴。沼とも池ともいえない水たまりには蓮の花が咲き、側には巨大な樹木がそびえている。風にクルクルとまかれている不思議な提灯のようなもの。はるか向こうの鬱蒼とした木立の中には・・・宮殿? 瀟洒な建物が尖塔をのぞかせ、そこここにただただ草木が生い茂る小道が続く。 |
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ある程度の年齢の人なら、ここで強烈なデジャビュに襲われることだろう。いつか、どこかで必ず見た風景。身近に親しんだ泣きたくなるほど懐かしい光景。身の周りに田んぼがあった頃。遊び場が夏草に覆われた空き地だった頃。木に登り、池で水を浴びて日が暮れるまで遊んだ頃。いろいろなシーンがフラッシュのように浮かび、急速に時間が巻き戻されていく感覚・・・。
隔絶されたという感じではなく、作り込まれたファンタジーの世界とも違う。誰もがどこか懐かしさを感じてしまう、もう一つの世界。そんな光景を見ただけで、ここに来てよかったと思ってしまう。すでに最高のもてなしを受けた気分になるのである。 |
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この感激は客室棟に入っても変わらない。景観を考えて配置されたコテージは、あるエリアはテラコッタが敷き詰められ、あるエリアはボードウオークが張り巡らされ、ゲストが緑の中を快適に歩けるよう配慮されている。素焼きの朱、自然な風合いの木材、白い壁、グレーの瓦屋根と、使われている色も景色の中に溶け込むようなものばかり。一見、なすがままにされているような草木もきちんと手入れがされており、通路に落ち葉ひとつないのも驚きだ。 |
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| 客室は一転して豪華な内装だ。ビビッドな色彩を極力配しているのか、全体的にスモーキーな印象で、飾られている絵画も落ち着いた上品な作品ばかり。ガラス張りになったバスルームは外に植物が植え込まれ、安心してくつろげるようになっている。そして広い広いテラス。どっしりした木製のテーブルセットと、エレガントなクッションが並んだ大きなソファ。ほとんどのゲストがここで朝食を取り(そのためのトースターも各室に置かれている)、ディナーも楽しむのだという。池の畔に灯る松明、ごくごく控えめな照明に浮かび上がる夜景は、それはそれは幻想的なのだという。そそて聞こえるのはカエルの声ばかり。中にはそれすらうるさいと感じるゲストもいるというから、敷地内の静かさは推して知るべしだ。 |
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| この静かでのどかな滞在を引き立ててくれるのが、フォーシーズンズリゾートのスタッフたち。敷地内でゲストに会うと、誰もが笑顔で声をかけてくれる。これは中庭で植木の手入れをしているスタッフからテニスのコーチまで例外のない対応だ。たとえ彼らがタイ語しか話せなくても、その様子は「あなたがここに来てくれて本当に嬉しい」という喜びに満ちているため、何ともいえず幸福な気分にさせられる。ちなみにかの農民たちも、立派なここのスタッフである。 |
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スパや各種施設が充実している中で、突出しているのがここのクッキングスクールだろう。ちょっとした教室ほどの大きさを持つ本格的な造りで、だるま型のユニークなレンジフードが楽しい。ずらりと並ぶタイの伝統的な調理器具や食器、グループごとに使える流しや調理台など、設備は最先端ながらも流れるムードはいたって素朴。すぐ脇にはオープンテラスの食事場所もあり、テーブル席だけでなく床に三角枕を置いたタイ独特の食事作法も体験できる。
フォーシーズンズリゾートはどこを切り取っても一幅の絵画になりそうな、申し分のないリゾートだ。自然と共存するリゾートは、よほどまめな手入れと改修を行い続けなければ、その美しさは保てない。だがここは完璧に、それをやってのけている。笑顔で、のんびりと。しかも手を抜かず。私たちは、あまりにも居心地のよいこの異空間で、特別な時間を過ごしている時、そのことには気がつかない。日常に戻り、改めてその驚異を思い知るのである。 |
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フォーシーズンズ リゾート チェンマイ ★★★★★ 客室数:80 [体験談を読む]
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Four Seasons Resort Chiang Mai Address : Mae Rim-Samoeng Old Road, Mae Rim,Chiang Mai,50180,THAILAND Phone : 66-53-298181 Fax : 66-53-298190 |
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