マダム:ミスターは先日イタリアから戻られたばかりですわよね。10日間のご滞在でしたっけ?それにしてもミスターの荷物っていつも信じられないほどコンパクト!どうすればそんなにシンプルにできるんですの? ミスター:ポイントは下着類かな。薄くて速乾性の素材のものを少なめに持って行って、まめに洗濯しているんですよ。 マダム:しかもセクシーに見えるという効果つき・・・かしら?ふふふ。 ミスター:マダムが前に、洗濯物をタオルにくるんで振り回す脱水法を紹介していたでしょう?私がやっているのはタオルにはさんで、海苔巻みたいにぎゅうっと巻き込みながら水分を抜くやり方。
マダム:なるほど〜。Tシャツやポロシャツなどの大物にも応用できそうですね。 前に紹介したといわれて思い出しましたが、わたくしがザ・べスト・オブ・無難として愛用している黒のスーツケースですけど、実は黒ってロスト・バゲッジの時に一番見つかりにくい色なんですって。 ミスター:ああ、聞いたことがあるね。世界中の空港に身元不明の黒いスーツケースが大量に眠っているらしいよ。アメリカのどこかの都市じゃ、一定期間保管した後にセカンドハウスに放出するみたい。そこでかつて失った自分の荷物に出合ったりしてね。ひと昔前の泥棒市場みたいだな。 マダム:そう、それを考えるとセミみたいな、ヨロイみたいな、あの、わたくしが死んでもイヤっと思うようなメカメカしいスーツケースの方が、イザという時の救出率は高いのかもしれませんわね。 ミスター:セミね!ははは。でもやっぱりマダムのこだわりは黒なんだよね。 確かにゼロハリは不死身だったな。その昔そう聞いて高い買物したかいあって、25年間一度もミシング、ロストなかったな。今は本人より早く現役引退して、大切に保管されているけどね。
マダム:こだわりといえばホテル。わたしくし最近は、トシと経験を重ねたせいか、ホテル選びにはうるさいですわよ。同行者が「安ければ安い方がいい」なんていうと、一気にテンションが下がりますもの。 ミスター:海外という「異文化」に飛び込んでいくんだからね。どうせならホテルだって、心躍るような滞在がしたいよね。 マダム:それにしても、ここ数年のホテルの変化ってすごいですわよね。 ミスター:2000年に入ってから顕著だね。 マダム:いわゆるデザイナーホテルとかブティックホテルなんていうのが続々誕生してますものね。 ミスター:もうね、メジャー路線が出尽くしちゃったんだよ。ホテルって「ホスピタリティ・インダストリー」といわれるように、ずっとサービスこそが一番の売りだったわけ。だから施設を充実させて、いろんなサービスを用意して、誰でも安心して滞在できるようなホテルを造ろうと思うと、必然的に規模は大きくなっていくわけだ。 マダム:以前は、そういう大型ホテルこそが花形でしたものね。
ミスター:だけど、時代とともにゲストの価値観やニーズが多様化してくると、もはやそういう画一的なやり方では対応できなくなってくる。 マダム:大型ホテルだと人件費がバカにならないし、改装するにしても巨額の投資や時間が必要ですから。 ミスター:そこで登場してきたのがデザイナーホテルであり、ブティックホテルなんだね。キーワードは「小規模」「小資本」「限定」かな。 マダム:至れり尽くせりのサービスは、もはや売りではないと。 ミスター:そういうのはリッツとかヒルトンなんかの大型ホテルが追求していく課題であって、じゃあ新しいホテルが何を売りにしていこうかと思うと、「ソフト」じゃなくて「ハード」なんだよね。 マダム:お洒落で快適で、ここにしかない空間を提供するということ? ミスター:そう、だから「なんで!?」っていうホテルがいっぱいあるでしょう?たとえばリゾートだったら、海からも繁華街からも近い場所にホテルを建てるのは集客のためには外せない要素だったはず。なのにそういうマーケティングの見地からすれば考えられないロケーションにホテルができちゃう。そんなところに泊まりたいと思わせるには、ホテル自体に独特の魅力がなくちゃ無理だよね。 マダム:最大多数の最大幸福はいらない、わかってくれる人が来てくれればいいというわけですね。
ミスター:ミシュラン流に云えば、一ツ星から、二ツ星、三ツ星への進化だね。そしてターゲットは明白にカップルだね。ヤッピー、DINKS、ゲイでもいいんだ。感性が豊かで、ゆとりがあって、好奇心の強い人たち。そういうカッティングエッジな人々のイマジネーションに訴求する、想像する、または想像を超えたイメージを具体化しようというのがデザイナーホテルやブティックホテルだね。 マダム:団体ツアーから個人旅行へと旅のスタイルが変わりつつあるのも追い風になっていますわね。 ミスター:先駆けになったのはニューヨークのハドソンかなぁ。ま、ここはちょっととんがりすぎてて、コンフォートとは対極だったけど。でもホテルをアートとしてプレゼンテーションした役割は大きいよね。それからスタルクやシュレーガーというデザイナーが手がけたホテルが次々登場し、やっぱりサービスや居住性もある程度は必要だよねということで、納得のブティックホテルが出てきた。 マダム:今やいわゆるB&Bやゲストハウスが、こぞってブティックホテルに「転向」していますよね。 ミスター:それが「小規模」「小資本」の強み。ありものを今風に変えればいいんだから。酒屋やたばこ屋がコンビニエンスストアに変身するようなもの。ミラノのガレリアの一角が、タウンハウスというホテルにしちゃったなんて、ビックリのケースもあるよ。
マダム:デザインも賢いですわよね。 ミスター:ミニマル、シンプルというやつね。かっこよく見えてこれほどメインテナンスの楽なインテリアはない。 マダム:かつてはトロピカルな花柄のベッドスプレッドにラタンの家具というのが定番だったビーチリゾートもミニマル化驀進中。もうそういう「お約束」を探す方が困難になりつつありますものね。 ミスター:いや、メジャー路線はまだキープしているよ。スタイリッシュな部屋にしても「こんなの落ち着かないっ」ていうお客さんがまだ実際大多数だもの。 マダム:ということは、今後はますますホテルの二極化が進むということかしら? ミスター:二極化というか、ますます多極化、多様化、少量高品質化が進んでいくと思うな。ブティックホテルといってもスイート、レジデンス、ヴィラのように形態は時代の要請に従って細分化しているし、ブルガリやアルマーニのような世界的ブランドがホテル業界に進出したり、スパの世界的な流行もホテルのあり方に大きな影響を与えていくはずだよ。どんなホテルが登場してくるのか、いちゲストにしてみれば、こんなに楽しい状況はないね。 マダム:お金に不自由しなかったらホテルで暮らしとたいと思うほどホテル好きなわたくしにとっても、ホテルの進化は見逃せませんね!
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