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> 建築様式学入門 > Vol.3 ロマネスク様式を採り入れたホテル
Vol.3 ロマネスク様式
(2/2)
ロマネスク様式を採り入れたホテル
ロマネスク様式の特徴である厚い壁、小さな窓、石の天井・・・、それらをホテル建築に採用するとしたらどうでしょうか? ラウンジやレストラン、バンケットの部分では「あり」のように思いますが、客室には向かないだろう・・というのが大方の想像ではないでしょうか。
ルネサンス、バロック、ロココの各様式は、ホテル建築という華麗な非日常空間を彩るのに好ましいものでした。しかしながらロマネスク様式は、主として禁欲的な修道院空間を演出してきた様式ですから、その様式をホテル建築へ直接的に採り入れるというのは、よほど特殊な営業方針を持ったホテルオーナーでない限り、普通はありえないように思います。
ザ・ドゥリスキル(オースティン/アメリカ)
テキサスの州都オースティンにあるTHE DRISKILLはアメリカのナショナルトラスト団体から歴史的建造物に指定され、モービルの『トラベルガイド2001』で星4つを獲得している重厚なホテルです。
建設年代が19世紀ですから、学問的に正確を期すならば、これは純正ロマネスクではなく、「クラシック・リバイバル(新古典主義建築)」に分類すべきものですが、先に述べたようにこの形式は非常に事例が少ないので、ホテル応用事例研究の貴重な資料として取り上げます。
文字通り重たそうな厚い石(ライムストーン)とレンガの壁、小さ目の開口部、連続する半円アーチとロマネスクの特徴を備えています。
【ホテルの詳細情報はこちら】
ドゥリスキル(オースティン)
さまざまな様式が入り交じった外観
(パラドール・デ・レオン)
上部は厚い石壁に小さな窓、連続する半円アーチとロマネスクの特徴を表している
パラドール・デ・レオン(レオン/スペイン)
もう一つの例はスペインです。マドリッドの北東約340km、レオンにある5ツ星ホテル「パラドール・デ・レオン(Parador San Marcos 別名「オスタル・サン・マルコス」)」です。
1530年の建立で、時代はすでにルネサンス期ですが、このホテルはスタイルとして、またその立地条件と当初の機能からして、状況としては多分に「ロマネスクの匂い」を漂わせています。
上層部は、半円アーチ、小さな開口部、厚い石の壁とロマネスク・タッチですが、建設年代が16世紀ですから、後世の複数の様式のカクテルになっていて、回廊は交差リブヴォールト(ゴシックの項で詳しく説明予定です)で、紛れもないゴシック様式。低層部分の列柱回廊にはルネサンスの雰囲気も漂うという、「建築様式ウオッチャー」にとっては実に楽しめる(?)建物です。
ところで、このホテルの説明に、かつて巡礼者(言うまでもなくサンチアゴ・デ・コンポステラへの)のための病院、あるいは監獄であった、という記述があります。これは非常に典型的な例なので、ここで少し、「ホテル」「病院」「刑務所」の三題話をしてみたいと思います。
「ホテル」「病院」「刑務所」
この一見バラバラの三つの「建築タイプ」は、実は非常に良く似ているのです。ヨーロッパでは、かつて貴族のための病院だったものが、現在では4ツ星ホテルなどという例にお目にかかります。
どこが似ているかというと、(1) 人間がそこで24時間生活する施設であること、(2) 内部で生活する人にサービスを提供する部分と、外部からそこを利用する人に供する部分とがあること、の二点。
そして、ホテルと病院の相違点は、お客さんが、健康か病気かの違いだけ。宿泊棟に相当するのが病棟、バンケット部分に相当するのが外来部分です。ホテルと刑務所の相違点は、つきつめると部屋の錠を内部から掛けるか外から掛けるかの違いだけ。
こんなふうに考えてみると、ちょっと面白いですよね。
・・・話がそれましたが、そういうわけでこのホテルは現在は5ツ星の豪華ホテルです。
【ホテルの詳細情報はこちら】
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構成・制作監修:栗田 仁(くりた じん)
建築家・東海大学講師。学生時代のヨーロッパ一人旅5週間以来、旅にはまる。
世界の終着駅建築、庭園、公共交通機関(とりわけ新世代高性能路面電車LRT)に格別の興味をもっている。
著書は世界35の街を描いたエッセイ『街はいつでも上機嫌』(静岡新聞社)ほか。
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