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知っておきたい建築様式学入門



Vol.5 ルネサンス様式 (1/2)

様式が生まれる歴史的背景-1 〜歴史のおさらい〜

ローマ帝国が東西に分裂(395年)し、西ローマ帝国が移動してきたゲルマン民族に滅ぼされる(476年)と、その後のヨーロッパは数百年にわたって芸術どころではない不安定な時期が続きます。

やがて9世紀になり、イベリア半島北部の聖地サンチアゴ・デ・コンポステラへの巡礼が盛んに行われるようになると、西ヨーロッパ各地からのこの地へ向かう巡礼経路上に、数多くの修道院がつくられました。それが「ロマネスク様式」でした。

さらに12世紀以降、キリスト教会の勢力のさらなる高まりとともに、各地におびただしい数の教会が建設されます。これらの教会の多くが「ゴシック様式」でした。

このように、ロマネスク様式とゴシック様式は、そのほとんどが教会建築もしくは修道院建築ためのものでした。


様式が生れる歴史的背景-2 〜神のための建築から、民のための建築へ〜

ところが14世紀以降、世の中は大きな変化の時代を迎えます。

その1つは、ルターの宗教改革に代表されるキリスト教会勢力の相対的な低下でした。そしてもう1つは、大航海時代前夜、海運、交易で財を蓄えた大商人の発生です。中でもフィレンツェのメディチ家は、総合商社+大銀行のような会社であり、さらに政治まで担当することになります。

そのような世相のもと、作られる建築の主流は教会や修道院のような「神様のためのもの」から「世俗の民のためのもの」にシフトしていきました。この時代、メディチ家がパトロン(建築の注文主)となり、パラッツオと呼ばれる都市建築(オフィスや住宅)、ヴィッラと呼ばれる郊外の別荘や荘園の中心をなす邸宅が独特の展開を見せることになります。

Catherine de' Medici

ところが、神聖なる神のための建築と民のための建築が同じ様式ではあまりに恐れ多いですから、急きょ、ロマネスクやゴシックとはちがうスタイルが模索されることになりました。

しかしながら、短期間に全く新しい様式を発明することは困難です。一方で、ご当地イタリアには過去の傑出した古典、即ちローマ様式の遺構が豊富に残っていました。しかもそれらローマ様式は、内部に“ギリシャの遺伝子”も含んでいる(ローマ様式参照)。

そのような状況下で、多くの建築家たちが「この伝統を元に発展形を創造しよう」と考えたであろうことは、容易に想像がつきます。こうして、ギリシャ、ローマを下敷きにした「再生=ルネサンス」という名の創造活動が始まったのでした。

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ルネサンス様式の特徴、及び実例

ルネサンス様式の特徴を一言で表すと「端正でしかも華麗」。フィレンツェから始まったこの様式は、ローマやヴェニスに広がるに従って少しずつ変化を見せていきます。ここでは、その代表的な建物をいくつかご紹介します。

パラッツオ・メディチ・リッカルディ(フィレンツェ)

この建物は、メディチ家の発注によってつくられた初期ルネサンスの代表的な建物の一つで、以下のようなルネサンスの特徴をよく表しています。

(1) 外壁の石積みが1階が荒々しくごつごつとした石で、上の階に行くにしたがって表面が滑らかな仕上げとなること。
(2) 2階と3階の窓が、半円アーチの複合形
(3) 最上部の分厚いコーニス(軒蛇腹)

さらに、時代が下って場所はローマになると、ルネサンス建築のアレンジが広がります。

パラッツオ・メディチ・リッカルディ(写真提供:増田建築研究所、撮影:平松省二)


パラッツォ・ファルネーゼ(ローマ)

この建物はルネサンス期のローマの代表的な建物ですが、大きな特徴として、窓回りの装飾的要素が挙げられます。テュンパノン(破風=はふ)と呼ばれ、家の形をした窓回り飾りです。三角屋根形と弓形の屋根形と平らな屋根形があります。

パラッツォ・ファルネーゼ(写真提供:増田建築研究所、撮影:平松省二)

パラッツォ・ファルネーゼ(正面の図)


テュンパノン(破風=はふ)と呼ばれる窓飾りが特徴的で、「三角屋根形」と「弓形の屋根形」と「平らな屋根形」があります。

パラッツォ・ファルネーゼ
さらに細かい部分を見ると、中庭の柱は下からドーリア式、イオニア式、コリント式と使い分けられ、これはローマの作法です。

パラッツォ・ファルネーゼ(中庭)



ルネサンス建築を語るとき、忘れてならないのがもう一つの大都市(都市国家)ヴェニスです。ヴェニスのルネサンス建築は明るく色彩も豊かで、ピンクの石を用いたり軽快な印象のものが多く見受けられます。

パラッツォ・ヴェンドラミン(ヴェニス)

半円の複合アーチ、大きなコーニスという共通の特徴を持ち、端正な中にもフィレンツェやローマのものより細かな飾りの要素も加わり、さらに華麗な印象をあたえます。

パラッツォ・ヴェンドラミン(正面の図)
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