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インタビュー


松井智子さん
ペナン:イースタン&オリエンタルホテル
ジャパニーズセールス兼ゲストリレーションズマネジャー
松井さんは奈良県の出身。大学を卒業後、1年半のOL生活を経てイースタン&オリエンタルホテルに勤務。初めてのホテルビジネスはハウスキーピングからのスタートでした。

大学では英語を専攻していたし、オーストラリアに留学経験もあったので英語はまあまあ大丈夫なんです。マレー語は勉強中。簡単なことがわかるくらいですね。ペナンは何度か来ていて、とても好きな場所だったんです。もともと東南アジアが好きで。でもタイはちょっと発展しすぎている気がして、つまらない。本音を言うと、いちばん好きなのはバリかなあ。

イースタン&オリエンタルホテルは格式のあるホテルですし、お客様の要求も高いので制服はスーツです。やっぱり気持ちが引き締まりますね。私が着ているのは前任者から受け継いだもの。たまたまサイズが同じだったので、お古になっちゃった。
OL経験があるので、お客様への対応など基礎的なことは身に付いていたので助かりました。それでも最初の頃は上手にアテンドができず「役に立たないなら日本へ帰れ!」と、女性の上司に叱られて泣いたことがあります。でも、泣いたのはそれ一度だけでしたね。ようやくフロントをまかされるようになったので、これからといったところです。
特に難しいのはビジネスマンのお客様のアテンドです。上司と部下なら、どちらをどのお部屋にご案内するのがいいのか・・・とか。上役だから上階の部屋がいいかというと、そうでもない場合もある。見極めが難しいですね。以前に100名のゴルフツアーがいらしたことがあり、その時はさすがに大変でしたね。休日だったけど、チェックアウトの日は出勤して、お見送りをして。それ以降は、どんな団体が来てもOKって感じになりましたね。

ホテルがホテルなだけに、おいでになる日本人ゲストの中には、ものすごく詳しい情報を持っておられる方も多く、突っ込んだ質問をされてタジタジとなることもあります。でもみなさんスマートで、お帰りの時に「ありがとう」って言われると、ああこの仕事をしていて良かったなと思います。
けれど、時々声を大にして言いたくなるのが「常識で考えて!」ということ。よくガイドブックなんかに、偽ポリスにだまされて云々・・・という話が載っていて、ホンマかいなと半信半疑だったんですけれど、いやー実際にいるんですね、そういう人が。
ホテルの中ではしっかりセーフティーを使うのに、外でポリスの格好をした人に話しかけられると、英語がわからないこともあってか、つい言うなりになっちゃうみたい。それと女性は深夜に出歩かないこと。到着が遅いと、皆さん元気が有り余っているから「遊びに行きたい」というんです。でも私は、今夜だけはホテルの中で我慢してとお願いする。ハイテンションの時が、いちばん危ないですから。あと、歩き方でも日本人だと目をつけられることが多い。ガイドブックを広げたり、キョロキョロしないで、なるべく姿勢をよくして堂々としていたほうがいいですね。

このホテルは5ツ星だけど、非常にスタッフ間の距離が近くてアットホームな職場です。去年の夏のスタッフパーティーは、なんとコスプレが義務! 誰に扮しているかを申告しないと、会場に入れてくれないんですよ。で、詰め物なしのブリトニー・スピアーズがいるかと思えば、どこで調達してきたのか羽織袴におもちゃの刀を指した上司がいたり。おかしかったですね。私? 私は「宇多田ヒカル」。こちらでは人気があるんですよ。まあチャイナ風な格好をしただけですが、入り口で堂々と「宇多田だ!」と開き直りました。芸の義務まではなかったのでよかったけど。

昨年末の津波の時は、幸か不幸か勤務中でした。午後2時少し過ぎだったかな、ふとロビーから外に目をやると、ガラスが決壊しそうな勢いで海水がせき止められている! その時は何が起こっているか全く分からなかったのですが、後にテレビの臨時ニュースで事の大きさを知りました。結局、ロビーまで流れ出した海水を排出するためスタッフ総動員で作業に追われることになりましたが、なんと数名のゲストもその作業に自発的に加わってくださったのです。そのほとんどが、年末年始をホテルで過ごすために宿泊していた常連の方々。本当に頭の下がる思いでした。
地震はないと言われていたペナン。そこで経験した地震そして津波。同僚には「日本人だから地震には慣れているんでしょう?」とも言われたけれど、それでも通い慣れたいつもの道路がめちゃくちゃに壊れ、行方不明になった人々を探す警察やレスキュー隊などを目にするたびに「絶対」なんていうものはありえないんだとしみじみ思いました。

ペナンに来て1年9カ月になりますが、アジアらしい田舎っぽさと、発展し続ける都会っぽさが同居したこの小さな島は、全く飽きを感じさせません。マレーシアには確かにいい加減なところがあって、時間や約束を守らないこともしょっちゅう。日本人はそういうところが勤勉なので、イライラしちゃうことが多いみたいですね。そういう私も振り回されたり、振り回したり・・・。郷に入れば郷に従えと言うか、これはもう、慣れていくしかないですねえ。
現地のマレーシア人たちはみな明るく強く、津波のことも今では遠い過去のように、驚くほど早い回復を果たしました。今ではその爪跡を発見するのが難しいほどです。見事なまでによみがえったペナンで、変わらない人々の笑顔にぜひ会いにきてください。
(この内容は、2005年取材時のものです。)
イースタン&オリエンタルホテル

大改装を経て蘇ったペナンのランドマークともいえるホテル。白く輝くような低層造りの壮麗な建物とそれを彩る格子窓、館内の随所に置かれたアンティークが植民地時代を面影を忍ばせる。
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