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私が見たアメリカのホテル
アメリカの一流ホテルで日本人マネージャーとして10年間勤務した著者が、日々の仕事の中でふと目にしたシーンから、日米の文化的な違い、考え方の背景にあるものなどをつづります。  著者紹介はこちら>>
第6回
歴史に根をもつ日米のサービス形態の違い

外国のホテルにいると、日本人の危機管理能力の欠如を痛切に感じる。 「部屋で盗難にあったのだから、責任をとってもらいたい。」などと言う人がまだいる。

アメリカのホテルでは、部屋どころか、部屋に備え付けのセーフテイーボックスの中ですら、所持品の紛失には責任を取らない。 「どうやって、そこに貴重品があったことを証明するのですか?」とひとこと言えば、それで終わりにできる。もし弁償などしようものなら、ホテルは詐欺師の絶好の餌食となってしまう。 だが、そんな失礼なことは言いたくないので、「部屋の紛失には一切責任を負いません」と約款に書いて終わりにしている。

アメリカには西部開拓史以来の「自分の身は自分で守る」という精神がある。その精神を失いたくないから、いまだに銃社会が続いている。他人に依存すれば、この精神を否定することになる。自己責任が強い社会が出来あがった所以だ。だから、ホテルへのゲストの依存度も高くならない。ゲスト自らが動いてサービスを受けられるシステムへと発展した理由の一つがここにある。

日本の宿泊文化は、江戸時代の参勤交代に利用された「旅籠」の繁栄から始まった。家来はすべて男達だから、集客力強化のために女性が宿泊客の面倒をみた。必然的に「至れり尽くせり」のサービス精神が発達することになった。その精神が「旅館」で磨かれ、今日のホテルへとつながっている。ゲストのホテルへの依存度が高いのは当たり前だ。

アメリカと日本の宿泊文化はその成り立ちからして、サービス形態に差があったのだ。だから、日本のホテルに泊まる感覚でアメリカのホテルに泊まれば、快適な滞在は難しくなる。アメリカに行く際には、この点をしっかりと認識しなければならない。

バックナンバー
第1回 アメリカの一流ホテルのホスピタリティー
第2回 チップの誤った常識
第3回 ホテルの選び方
第4回 アメリカのホテルのセキュリテイー設備
第5回 アメリカのホテルの環境保護対策
第6回 歴史に根をもつ日米のサービス形態の違い
第7回 オーバーブックへの理解
第8回 ホテルはコーポレート・イメージの象徴
第9回 大雑把なアメリカのホテル運営
第10回 素晴らしきアメリカのホテルのノウハウ
第11回 セクハラ意識の薄い日本のホテル
著者:奥谷 啓介
1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントとして活躍中。

【HP】奥谷 啓介オフィシャルサイトはこちら http://www.okutanikeisuke.com/
「世界最高のホテル プラザでの10年間」
ニューヨークの最高級ホテル「ザ・プラザ」に10年間勤務した日本人マネージャーが書いた、「フロントデスクの内側から見た日米比較文化論」。日米文化の差により生じる、日本人がアメリカで陥りやすいトラブル、恥ずかしい行いなどの例を挙げ、「なぜそれが起きるのか」「防ぐにはどうしたらよいか」をプロの立場から辛口のアドバイス。快適な海外旅行を楽しむための必読本です。
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