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知っておきたい建築様式学入門



Vol.7 ロココ様式 (2/2)

ロココ様式のホテル

ロココ様式は、お化粧でいえば「ナチュラルメーク」からは一番遠いところにある、厚化粧的、唯美的で装飾性に満ちた、さらには官能的なスタイルといえます。しかし、ホテルという、旅人にとっての非日常的空間、その街の市民にとっての「ハレ」の空間では、このようなスタイルがあることは自然なことのように思えます。

一方、前のページでご紹介したようにこのスタイルのオリジナルが宗教建築であったことを考えれば、なにやら不思議な、不自然な感じも受けますよね。

いずれにしてもこの様式は、本格的につくろうと思ったら相当に手間ひまがかかります。つまり工事費がかさみます。良いことがわかっていても、実現は必ずしも容易なことではないこと、頭の隅に置いてください。

それでは、世界各地のロココ様式ホテルの実例をご覧いただくことにしましょう。


グランド・ホテル(オスロ/ノルウェー)

路面電車が走るオスロ中央駅前から、西に徒歩10分ほどの位置にある5ツ星ホテル。
外観がロココという建築実例は非常に少ないのですが、これはかなり貴重な「外観ロココ」といえます。メルク修道院やヴィース巡礼聖堂の屋根に共通する雰囲気を感じさせます。それまでのどの時代にもなかった不思議な曲線の組み合わせが独特です。

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ひときわ目をひく外観

華麗なサロン
ネグレスコ(ニース/フランス)

ニースの海岸通り「英国プロムナード」に面するこの街随一の5ツ星ホテル。
白壁に茶色のドーム屋根が特徴で、ロカイユに似た装飾要素や変則的な曲線の組み合わせによる造形に特徴があります。内部空間も、たとえばラウンジの内装は白とゴールドのコンビで、こちらもロココです。

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ラファエル(パリ/フランス)

エトワール凱旋門を中心に、東に伸びるシャンゼリゼから南東回りに3本目がクレベール大通り。エトワール凱旋門からクレベール大通りを南に約200mという位置にある5ツ星ホテルです。
複数の弓形のぺディメント(破風、屋根型)と、その中央に設けられたロカイユ模様が高層部の表情を引き締め、優雅で豪華な雰囲気を醸し出しています。

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ソフィテル・アルク・ド・トリオンフ(パリ/フランス)

エトワール凱旋門から石を投げたら届きそうな位置にある4ツ星ホテル。1階から5階までは比較的抑えた表現をし、帽子に相当する6階とその上部の屋根窓(ロフト階の窓)の扱い、およびコーナーの頂部の表現は、バロック的でも、19世紀の新古典主義的でもなく、微妙な曲線がロココ風です(ただし、「典型的なロココ」ではありません)。
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ゴールデン・チューリップ・アトランタ(ブリュッセル/ベルギー)

ブリュッセル中心市街地、グランプラスからグルメ街をぬけて北東方向(北駅方向)に約400mの位置にある4ツ星ホテルです。 8階建てのファサード(通りに面する建物の正面)は、階高のある1階と、2階〜5階までの中層部、6階〜8階の上層部に分かれています。6階から8階は壁面に繊細な彫刻が施され、オムスビ型に緩やかな三角形をなし、頂部は弓形のぺディメントとなっています。不思議な曲線構成です。
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リッツ(バルセロナ/スペイン)

旧市街、チトゥアン広場の南西約200mの位置にある5ツ星ホテル。1919年の創業で客室総数は127室。ロココ様式の装飾要素であるロカイユ模様のモチーフが、上層階の際立ったアクセントとなっています。
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ロイヤル・サヴォイ(ローザンヌ/スイス)

レマン湖まで5分の位置に建つ4ツ星ホテル。尖った屋根を見て、一瞬「ゴシック様式」かと思われるかもしれませんが、外見上には尖り屋根以外のゴシック的要素はありません。中央部以外の屋根、壁面、とりわけ低層部の壁面のバロックをさらにひねったようなところにロココの匂いがします。(「典型的ロココ」というわけではありません。)

ちなみにスイスは、前ページでご紹介したドイツと並んで、修道院系建築にロココの遺産の多い土地柄です。

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モンテレオーネ(ニューオリンズ/アメリカ)

この街最大の観光地、フレンチクオーターに位置する3ツ星ホテル。ナショナルトラスト組織から「歴史的ホテル」に指定され、劇作家テネシー・ウィリアムズや作家トルーマン・カポーティらも泊まっています。1886年に64室で開業、増築に増築を重ねて現在は597室。玄関周りの装飾にロカイユ(貝殻)模様など、典型的なロココの特徴を見せています。
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ワーウィック(ニューヨーク/アメリカ)

セントラルパークの南、MOMA(近代美術館)から1ブロック北にある3ツ星ホテル。1927年の開業、客室総数は423室。
1〜3階とそれ以上の壁面の扱いを切り替えており、低層部分に濃厚に装飾要素を集中、エントランス上部のロカイユ模様が際立っています。

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構成・制作監修:栗田 仁(くりた じん)

建築家・東海大学講師。学生時代のヨーロッパ一人旅5週間以来、旅にはまる。
世界の終着駅建築、庭園、公共交通機関(とりわけ新世代高性能路面電車LRT)に格別の興味をもっている。
著書は世界35の街を描いたエッセイ『街はいつでも上機嫌』(静岡新聞社)ほか。

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