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あこがれの高級ホテル


ペニンシュラ マニラ The Peninsula Manila
飛翔の日を待ち続ける不運の女王
コロニアル調の典雅なロビーを満たす、穏やかなさざ波のような話し声。バックには静かにモーツァルトが流れている。回り階段の左上に張り出した円形スペース。その小振りのボックスには、タキシードではなくフィリピンの伝統衣装バロンに身を包んだ演奏者が立つ。彼らは毎日ロビーを眺めわたし、その日の雰囲気に最もふさわしい曲を、ホテルの主役であるゲストのために演奏し続けているのだろう。広い館内を猫のようにしなやかに歩き回るのは白装束に身を包んだベルボーイと、黒いワンピースに白い小さなエプロンとメイド帽を髪に載せたメイドたち。こちらは、まるで古い映画のワンシーンからタイムスリップしてきたような正統派のコスチュームである。
マニラのペニンシュラは、はっきり言って不幸だ。香港やバンコクの同ホテルに決して劣ることのない風格と威厳を兼ね備え、きちんとした評価を得ていながらもなかなか注目される機会がない。原因は「マニラ/フィリピン」のイメージである。歓楽の地として男性が大挙して詰めかけるいかがわしい都市。政変が相次ぐ不安定な都市。貧困と犯罪が渦巻く危険な都市。その風聞と偏見だけが一人歩きし、多くの一般旅行者が敬遠してしまう国。本当にそうなのだろうか?

初めて一人でマニラを訪れた女性の目から見たここは、優しい人々がたくさんいる、どこにでもあるアジアの一都市にすぎない。有名ブランドがずらりと並ぶショッピングセンターが林立し、スーツを着たビジネスマンが携帯電話で話しながら歩道を闊歩する。街角で女子学生が笑い転げ、タクシーの運転手はメーター通りの金額を「サンキュー」と受け取る。敢えてスラムに踏み込まない限り、身の危険を感じることなどないのだ。飛行機でたった4時間。穴場的な離島リゾートをたくさん持ち、観光も買い物も楽しめる国。それがフィリピンの今の姿である。
マニラのホテルの日本人スタッフのほとんどは、このイメージの一人歩きに歯がみする思いでいる。設備も施設もサービスも常に改善し日本人ゲスト(特に女性)の来訪を待ち望んでいる。特にその思いが強いのがペニンシュラだ。開業は1976年。数多くの著名人が訪れる最高級ホテルとして名を馳せ、地元の人々に愛され続けているマニラの「女王」。その姿を最もよく表しているのがロビーラウンジのアフタヌーンティーである。

真っ白なテーブルクロスに映えるジノリの食器。件のメイドが運んでくる銀のバスケットには、スコーン、ケーキ、サンドウィッチが美しく盛りつけられ、絶妙のタイミングでティーポットを取り替えてくれる。もちろん紅茶の種類も豊富だ。これを楽しみに訪れるゲストも多いらしく、みなちょっぴりおしゃれをしている。小さな子も、リボンやフリルがめいっぱいの「お稽古発表会」状態。お行儀よく椅子に座り、でもついついケーキにかぶりついてしまうのが微笑ましい。高い天井まで届く大きな窓から差し込む陽射しが薄れてくると、アンティーク調のシャンデリアに灯がともり、辺りをますますエレガントな空気に染め変えていく・・・。
もしあなたが滞在客なら、客室を使うことでもっと「女王」の風格を堪能できるだろう。そこもまたクラシカルなコロニアルスタイルである。繊細なデザインの椅子やテーブル、たくさんのクッション、寝心地のよさそうなベッド。白い壁を柔らかく照らす間接照明。だが設備はクラシカルとはほど遠い。全室ブルートゥース対応で、ファクス完備。しっかりしたワーキングデスクが置かれ、ビジネスユースを意識した造りになっている。かといって、それらが室内のやさしい雰囲気を壊すことはない。絶妙に融合し居心地のよさを優先しているのだ。どこまでも女性的なイメージなのである。

その思いは、館内のどこを歩いても感じることができるはずだ。有名なイタリアン・レストラン「ミピアーチェ」(「わたしのお気に入り」の意)しかり、こぢんまりとしたプールしかり。ところがスパだけは、意外なことにややスポーティーな感じで機能性・ヘルシー志向が前面に出ている。女王様、もしかして全てをロマンチックにするのには、やや抵抗があったのか・・などと余計なお世話を焼きたくなってしまう。

運良く滞在中にウエディングバンケットに遭遇できたら、ぜひともちらりと様子をうかがってみて欲しい。結婚式が女性にとって人生最高の晴れ舞台であることは、いくら時代が変わろうと普遍的な真実。ことに華燭の典をここペニンシュラで挙げることは、地元の女性にとって夢の中の夢。白をメインにした花々とチュールやサテンであふれかえる会場には、その夢を実現させた花嫁の喜びと幸福がありありと描き出されているようだ。思わず「お幸せに!」と声をかけてあげたくなってしまう。
優雅さと威厳を持ってマニラに君臨し続ける「女王」。彼女は自ら私たちの側に降りてきて、誘いかけることはしない。ただ待っている。常に居住まいを正し、おのれを磨き、自分を愛し訪れてくれる人々に最大の愛情を返してあげるために。私たちはまだ女王の本当の姿を知らないでいる。そこがどれほど美しく心地よい空間かを、知らないまま見過ごしている。早く気がついて欲しい。そして自分の目で確かめて欲しい。フィリピンという国を、マニラという都市を、そしてペニンシュラの現在を。ペニンシュラは、両手を広げていつでもあなたを待っている。
ペニンシュラ マニラ
★★★★★
客室総数:498室
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The Peninsula Manila
Address : Corner of Ayala and Makati Avenues, Makati City,Metro Manila,1226,PHILIPPINES
Phone : 63-2-8872888
Fax : 63-2-8154825
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