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私が見たアメリカのホテル
アメリカの一流ホテルで日本人マネージャーとして10年間勤務した著者が、日々の仕事の中でふと目にしたシーンから、日米の文化的な違い、考え方の背景にあるものなどをつづります。  著者紹介はこちら>> 
第13回 労働組合の力 NEW!
第12回 レベニューマネージャーの力
第11回 セクハラ意識の薄い日本のホテル
第10回 素晴らしきアメリカのホテルのノウハウ
第9回 大雑把なアメリカのホテル運営
第8回 ホテルはコーポレート・イメージの象徴
第7回 オーバーブックへの理解
第6回 歴史に根をもつ日米のサービス形態の違い
第5回 アメリカのホテルの環境保護対策
第4回 アメリカのホテルのセキュリテイー設備
第3回 ホテルの選び方
第2回 チップの誤った常識
第1回 アメリカの一流ホテルのホスピタリティー
第13回
労働組合の力

ニューヨークのメジャーなホテルはユニオン(労働組合)に加盟している。ユニオンはときとしてサービスの足かせとなる。
「いらっしゃいませ。お疲れさまでした。」と、私は頻繁に来る顧客を迎えた。大きな荷物が一つタクシーから下ろされた。私はベルマンを探したがどこにも見当たらない。

「荷物はあとでベルマンに届けさせますから、ここで預からせてください。」
「待つのは大変だから、自分で持ってあがります。」

まずいことになったと、私は心で舌打ちをした。知り合いを迎えておきながら、彼が荷物を運ぶのをただ見ていることはできない。そんなことをしたら、彼からあまりにも不親切な人と思われてしまう。
だが、だからといって、代わりに荷物を運ぶこともできない。それはユニオンとの契約によって、禁じられているからだ。私が運べば、ベルマンにチップが入らなくなる。彼らからお金を稼ぐ機会を奪ったことになって訴えられてしまう。

大きな団体が早朝にチェックアウトするときも、不満とされることが起きた。その団体は6時に出発することになっていた。部屋数が100もあるので、荷物を下ろすには1時間半かかる。4時半からゲストは荷物をまとめてベルマンを待たなければならない。

「そんなに早くから起きるのは大変なので、各自、自分で荷物を運ぶことにしますよ。」

とても格好の悪いことだが、それも仕方のないことだとあきらめた。だが、了解を得なくてはならないことがある。
「ベルマンを使わなくても、荷物ひとつにつき1ドル50セントが請求されます。」ということだ。

さすがに、「冗談じゃないですよ。ホテルがすばやく荷物を下ろせないから仕方なしに、ゲストが自らするのです。それにお金がかかるなんて!」

だが、これもユニオン・スタッフの利益を守るための契約だから変えられない。
さらに、ユニオンがストライキを起こすと、ニューヨーク中の全てのユニオン・ホテルが麻痺する。1990年代半ばに一度起こり、私はルームサービス係りとなり食事を配達したことがある。そのときは3日程度で終わったが、過去には3週間以上つづいたことを記す記録も残っている。

著者:奥谷 啓介
1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントとして活躍中。

【HP】奥谷 啓介オフィシャルサイトはこちら http://www.okutanikeisuke.com/
「世界最高のホテル プラザでの10年間」
ニューヨークの最高級ホテル「ザ・プラザ」に10年間勤務した日本人マネージャーが書いた、「フロントデスクの内側から見た日米比較文化論」。日米文化の差により生じる、日本人がアメリカで陥りやすいトラブル、恥ずかしい行いなどの例を挙げ、「なぜそれが起きるのか」「防ぐにはどうしたらよいか」をプロの立場から辛口のアドバイス。快適な海外旅行を楽しむための必読本です。
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