私が見たアメリカのホテル
アメリカの一流ホテルで日本人マネージャーとして10年間勤務した著者が、日々の仕事の中でふと目にしたシーンから、日米の文化的な違い、考え方の背景にあるものなどをつづります。  著者紹介はこちら>>
第43回
ホテルのマーケティング戦略

私は1994年の11月にプラザに就職した。そのときは、ドナルドトランプ氏がオーナーで、ウエスィンホテルズとプラザの関係はマーケティング契約だった。もともと、長きに渡りウエスティンホテルズがプラザのオーナーで、トランプ氏は、その間、なんどかウエスティンに売買交渉を持ちかけていた。トランプ氏はプラザを“ニューヨークのクラウンジュエリー(王冠)”と呼び、小さな頃からプラザにあこがれていたという。だがウエスティンが首を縦に振ることはなかった。

1988年に、ウエスティンホテル全体が青木建設に買収され、ついにトランプ氏の望みが叶うときがきた。トランプ氏はプラザを買収し、独自に運営するために、プラザオペレ―テイングパートナーズという会社を設立して優秀な人材を他のホテルから引き抜いた。その1人に、ウオルドルフアストリアの営業部長がいた。彼は、いくらプラザと言えど、800室ものホテルの集客は難しいと判断し、ウエスティンホテルのひとつのホテルとして世界中で販売を続けるように、マーケティング契約を結んだのだ。当時、ウエスティンホテルズはプラザにマネージメント(運営)契約をすることを望んだが、今度はトランプ氏がそれを受け入れることはなかった。

1990年後半になると、トランプ氏の勢いにも陰りが見え始め、1997年にはプラザを手放さなくてはならなくなる。新しいオーナーは、サウジアラビアの王子、アルワリ―ド氏と、シンガポールのCDL。アルワリ―ド氏がフェアモントホテルズのオーナーであったことから、プラザはフェアモントホテルズが運営するホテルとなり、ウエスティンとのマーケティング契約は終わりを迎える。今でこそ、フェアモントホテルズは世界一の最高級ホテルチェーンとして数多くのホテルを世界中に持っているが、当時は数えるほどしかなく、とてもインターナショナルホテルチェーンと言えるものではなかった。だが、ホテルマネージメントカンパニ―である以上、ウエスティンホテルズとのマーケティング契約を続けることは許されない。そこで、彼は、マーケティングだけを専門としている、リーディングホテルズオブザワールドと契約を結び、世界市場でのプラザのネットワークを確保する戦略をとった。

プラザをアメリカで知らない人はいない。おそらく、世界でもっとも知られているホテルのひとつだろう。だが、それでも単独のホテルとして動いていたら、800室の集客をするのに大変だ。だから、インターナショナルネットワークに入る道を常に選んできたのだ。今、多くの日本のホテルが集客に苦しんでいる。特に東京にあるホテルなら、プラザが行ったように、インターナショナルホテルチェーンのネットワークを利用する方法を考えるべきだ。

バックナンバー
第1回 アメリカの一流ホテルのホスピタリティー 第2回 チップの誤った常識
第3回 ホテルの選び方 第4回 アメリカのホテルのセキュリテイー設備
第5回 アメリカのホテルの環境保護対策 第6回 歴史に根をもつ日米のサービス形態の違い
第7回 オーバーブックへの理解 第8回 ホテルはコーポレート・イメージの象徴
第9回 大雑把なアメリカのホテル運営 第10回 素晴らしきアメリカのホテルのノウハウ
第11回 セクハラ意識の薄い日本のホテル 第12回 レベニューマネージャーの力
第13回 労働組合の力 第14回 法律の国と常識の国
第15回 人種差別はどこにある 第16回 経済を回復させる社会構造と悪化させる社会構造
第17回 維持費のかかる歴史的建造物 第18回 不景気の打撃を受けるニューヨークのホテル
第19回 名物ドアマン引退に因んで 第20回 姿を消したマンハッタンの高級ホテル
第21回 ホテル業界の名物男が手がけるホテル 第22回 新型インフルエンザ体験記
第23回 サービス発展途上国 日本 第24回 消費者の厳しい目
第25回 お客様は神様ですの勘違いが日本を駄目にする 第26回 エンパワーメント
第27回 枕チップなど必要ない? 第28回 松井選手にニューヨークが沸いた日
第29回 労働環境に見る日米の違い 第30回 アメリカのホテルでの子供の扱い方
第31回 アメリカのホテルに見るマネージャーの雇用形態 第32回 “お客様は王様です”に見るアメリカ社会
第33回 日本のホテル淘汰時代の序曲 第34回 ホテル業界から見る日本の近未来
第35回 国が違えばサービス比較はナンセンス 第36回 アメリカのホテルのクオリティーコントロール
第37回 栄華の象徴プラザホテル 第38回 グローバル化の波に乗るアメリカのホテルチェーン
第39回 利益を追求するためのホテル構造 第40回 主流になりつつあるコンドミニアム兼ホテル
第41回 アメリカのホテルマンが持つ危機感と欲望 第42回 セレブゲストが与えてくれたもの
第43回 ホテルのマーケティング戦略 第44回 プラザホテル買収劇の裏話
第45回 サービスの違いは文化の違い 第46回 変動制料金
第47回 ホテルチェーンの変遷 第48回 北朝鮮のホテルの中に見たアメリカ
第49回 伝説を伝えるアメリカのホテル 第50回 ホテルのクリスマスパーティー
第51回 アメリカ人のうらやましいプロ意識 第52回 日米に見る食文化の違い
第53回 憧れのクラッシックホテル 第54回 社会のあり様を映しだすホテル
第55回 トップダウン制の力強さ 第56回 ニューヨークのホテルのキングとクイーン
第57回 夏のニューヨークのホテルの使い方 第58回 チップとは
第59回 同時多発テロから11年(番外編) 第60回 ホテルマンは人を見ぬくプロ?
第61回 すばらしき労働環境を造りだすアメリカのシステム 第62回 固定客を確保するための努力
第63回 プラザ合意の生き証人 第64回 ベルマンのチップ
第65回 コンシェルジェの裏話 第66回 超一流の働き方
第67回 映画を利用したイメージ造り 第68回 チップの額
第69回 アップグレードを狙うゲスト 第70回 ホテルの新しい経営方法
第71回 海外ホテルの常識は様々 第72回 アメリカのホテルで学んだ“労働意識改革”
第73回 おもてなしを世界に! 第74回 ジョブホップ
第75回 日本的経営が通用しないアメリカのホテル 第76回 法律社会のホテルと常識社会のホテル
第77回 超一流のエリートたる所以 第78回 ミッドタウンのホテルの歴史
第79回 夢をかなえてくれたアメリカのホテル 第80回 弱者を優先するアメリカのサービス
第81回 アメリカのホテルで守るべきマナー 第82回 実力の世界
著者:奥谷 啓介
1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントとして活躍中。


【HP紹介】
奥谷 啓介オフィシャルサイト(http://www.okutanikeisuke.com/)
<著書紹介>
「超一流の働き方」
ビートルズ・ケネディ大統領・サウジの大富豪……全世界のVIPらに愛され、マネージャーとして超一流の世界で学んだ世界標準の「サービス」「心の持ち方」「自分の活かし方」「生き方」を公開!
「超一流の働き方」
「なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか」
「アメリカのホテルで1万円儲かることが、日本のホテルでは3,780円しか儲からない」といわれるほど世界最低レベルの生産性。働けど働けど儲からないワーキングスタイルに苦しめられるのはもうやめよう。
「なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか」
「はえくんの冒険」(原作:アントニオ猪木、著:ケニー奥谷、絵:八雲)
ブラジルの中央、マッドグロッソにある牧場に生まれた「はえくん」の物語。原作のアントニオ猪木氏が自身の体験をもとに長年あたためてきた企画が、奥谷氏の手により絵本になりました。大人が読んでも楽しめる愛と友情の物語です。
「はえくんの冒険」
「サービス発展途上国日本 ー 「お客様は神様です」の勘違いが、日本を駄目にする」
サービスを向上させるにはスタッフを幸せにすることが一番の近道。アメリカの超一流ホテルでの経験から綴る業界改革論。
「サービス発展途上国日本 ー 「お客様は神様です」の勘違いが、日本を駄目にする」
「海外旅行が変わる ホテルの常識」
「プラザ」元マネージャー直伝、一流ホテルで恥をかかない滞在術。この一冊があなたのアメリカ滞在を変える!レジャーはもちろん、ビジネスにも役立つ情報の集積。国際人の責任として、海外に行く前にその国の常識を学ぼう。
「海外旅行が変わる ホテルの常識」
「世界最高のホテル プラザでの10年間」
アメリカのホテルはなぜこんなに不愉快なのか!?「日本人利用客」VS「アメリカ人従業員」。果てしないトラブルの非は、どちらにある?敏腕マネージャーがフロント・デスクの内側からみた「日米比較文化論」。
「世界最高のホテル プラザでの10年間」

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