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Vol.3 古代集落の遺跡オロンゴ
ラノ・カウにはもう一つ見所がある。火口の縁に建つオロンゴとよばれる古代集落の遺跡だ。かつてここでは「鳥人儀礼」というものが行われていた。簡単に言えば複数の部族の人々の間で争われる「島の権力争奪戦」である。
各部族の長は自分の戦士を一人指名し、沖合いにある小さな岩島に海鳥の卵を獲りに行かせる。そしてその卵を一番早く持ち帰った戦士の長が、次の一年間「鳥人」として村人に崇められ、政治的実権をもにぎることができた。部下の手柄で上司が潤うあたりが会社的で悲しい。
切り立った崖のオロンゴ
後でイ−スタ−島の歴史を映画化した「ラパ ヌイ」というタイトルのビデオを見たが、その中に描かれている「鳥人儀礼」は恐ろしく壮絶なものだった。オロンゴから海に出るまでの断崖絶壁から誤って転落死するものもいれば、泳いでる途中サメに喰われてしまうものもいて、絶対に参加したくない命がけのトライアスロンなのだった。
ラノ カウで恍惚の境地に浸って、いったんホテルに戻った。軽く昼食を済ませた後、いよいよモアイの散策に出かけることにする。
モアイは島全体に散らばっている。村の周辺の海岸線にも何体か立っているが、最大の見所は島の南東に位置する“ラノ ララク”だ。ここは全てのモアイを製造していた石切場で、現存するモアイの大半がある。村から約20キロ、自転車でいくにはけっこうな距離だが体力もだいぶ回復しているし、地図を見る限りアップダウンもそう激しくないように見えた。
「時間は十分あるし、ゆっくりいけば大丈夫だろう。」と、ノ−テンキに出発したのだが、この判断はおおいに間違っていた。力強く突き進んでいたのは最初の30分だけで、ギラギラとした太陽は容赦なく僕の体力を奪い、未舗装の路面の衝撃は、じわじわとジャブのように尻に効いてきた。
「これはヤバイかもしれない・・・。」と再び不安になり、頻繁に休憩をとることにした。しかし、行けども行けどもモアイ群は現れず、ただ単純な牧歌的風景が繰り返されるばかりである。たまに放牧されている牛や馬たちが唯一のアクセントだった。
「なにか珍しい動物でもいないのかな?」そういえば島に上陸してから目にした動物は馬、牛、犬ぐらいなもので、「なんだこれは?」と言いたくなるような孤島に生息しがちな珍獣はただの一匹も見ていない。
後で聞いた話だがイ−スタ−島固有の野生動物は小さなネズミぐらいで、ほとんど何もいない状態に等しいらしい。毒蛇はおろか、蛇自体存在せず、虫にいたってもゴキブリがうろうろしてるぐらいで有毒なものは皆無であるという。不思議というか、非常に平和的ではあるが、動物好きの僕にとってはかなり物足りなかった。
目の前にそびえるラノ ララク
さらに一時間ほど走って、体中の骨がギシギシと悲鳴をあげ始めたころ、遠くの方にたくさんのハエがたかったような山肌が見えてきた。
「頼むからあれであってくれ。」祈りながら近づいていくと、ハエはどんどんモアイの顔になっていった。相当疲労は激しかったが、テレビの画面でしか見たことのないあの光景が目の前に広がると再びエネルギ−が充電されたように身体中が熱くなった。
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